
いまから80年前に小林多喜二が発表した小説「蟹工船」。劣悪な環境で働く労働者たちの闘争を描いたこの作品は、プロレタリア文学の最高峰と賞賛され、歴史に名を刻んだ。
そして、ある書店の一枚のPOPから始まり、あらゆるメディアにとりあげられ、昨年末流行語大賞のTOP10入りを果たすなど、「蟹工船」は時代を超えて再び脚光を浴びた。
この名作を多様な価値観が氾濫する現代へ向けて、新機軸で映画化したのは疾走感溢れる作風で多くのファンを持つSABU監督。原作の持つ物語の構造を残しながら、スタイリッシュな映像と独特のユーモアを武器に、骨太でかつ現代的な作品に仕上げた。
“蟹工船”の船内で熱い火花を散らす男たちを演じるのは、日本を代表する俳優たち。虐げられる労働者のリーダーとなっていく新庄を、多くの監督から厚い信頼を得ている松田龍平。労働者を酷使する鬼監督・浅川には、従来のイメージを覆す怪演で演じきった西島秀俊。さらに高良健吾、新井浩文、柄本時生、木下隆行(TKO)、木本武宏(TKO)ら、フレッシュで個性あふれるキャストたちが男たちのドラマをさらに熱くしている。
80年前に小林多喜二が伝えたかったメッセージ。SABU監督が現代の日本に呼びかける≪希望≫の意味とは?混迷の現代を生きるすべての人々へ捧げる魂の叫びが、日本を熱くする!!
カムチャッカ沖で蟹をとり、船上で缶詰に加工する蟹工船「博光丸」。
そこでは出稼ぎ労働者たちが劣悪な環境におかれ、安い賃金で酷使されていた。過酷な労働と栄養失調で亡くなる者も続出した。 監督・浅川は労働者を人間扱いせず、非道のかぎりを尽くす。
労働者の一人・新庄は、現世に未来はないので、来世こそは金持ちに生まれると、妄想を皆に説く日々だった。
ある時、新庄は蟹工船から脱出し、幸運にもロシア船に救助される。そこで初めて目にする全く別の世界。目覚めた新庄は蟹工船に戻り、皆に今の状況に甘んじてはいけないと一斉蜂起をけしかける。
だが、それはあっけなく鎮圧されてしまうのだった。志半ばで帰らぬ人となった新庄。蟹工船の火は消えたかに見えた。しかし、それでも彼らは新庄の意思を継ぎ、もう一度立ち上がろうとするのだった。
[ 2009年7月公開 ]