INTRODUCTION
時は室町、“応仁の乱”前夜の京―――。大飢饉と疫病の連鎖、路上に重なる無数の死骸。そんな混沌の世の中に風の如く現れ、巨大な権力に戦いを挑んだ者たちがいた…。蓮田兵衛―――日本史上、初めて武士階級として一揆を起こし、歴史書に唯一度だけその名を留める男。本作は彼の元に結集した「アウトロー=無頼」たちの知られざる戦いをドラマチックに描いた。
主人公の兵衛は、己の腕と才覚だけで混沌の世を泳ぐ自由人。だが、無用と思えば関所に火をかけ、役人も平然と斬り殺す無頼漢。そんな複雑な魅力に満ちた兵衛を演じるのは、今や国民的スターとなった大泉洋。周囲を惹きつける求心力を持つキャラクターは、まさに彼のハマり役。さらに剣の達人役として本格的な殺陣・アクションに初挑戦するなど、撮影時50歳を迎えた大泉が兵衛というキャラクターにエネルギッシュに命を吹き込み、“大泉史上最高にカッコいい男”を演じきっている。兵衛に拾われ、大きく運命が動き出す青年・才蔵役に抜擢されたのは、「なにわ男子」の長尾謙杜。血の滲む修行の後、六尺棒を武器にした“無敵の棒術”を身につけ戦う才蔵。そんな“棒術”を修得すべく長尾は特訓に励み、超人的なアクションを披露。また兵衛の師でもあり、才蔵に棒術を教え込む老師役に、柄本明。民を虐げ、贅沢にふける有力大名・名和好臣役の北村一輝。高級遊女にして、混沌の世と無頼漢たちの間を漂う絶世の美女・芳王子役に松本若菜。そして堤真一が、兵衛の悪友にして、宿敵となる骨皮道賢役に扮している。兵衛と似た匂いのする男・道賢も実在の人物で、黒ずくめの着物に迫力みなぎるオーラ、アクションにも定評のある堤が魅せる殺陣は必見だ。
原作は昨年、『極楽征夷大将軍』で直木賞を受賞した垣根涼介の『室町無頼』(新潮文庫刊)。監督を務めるのは『22年目の告白―私が殺人犯ですー』『あんのこと』など、濃密な人間ドラマをエンタメに昇華させてきた入江悠。憧れだったという京都撮影所に飛び込み、伝統ある撮影所の職人たちと共に、新時代のアクション・エンタテインメントを完成させた。
STORY
1461年、応仁の乱前夜の京。大飢饉と疫病がこの国を襲った。
賀茂川ベリにはたった二ヶ月で八万を超える死体が積まれ、人身売買、奴隷労働が横行する。しかし、時の権力者は無能で享楽の日々を過ごすばかり。貨幣経済が進み、富める者はより一層富み、かつてない格差社会となっていた。
蓮田兵衛は、己の腕と才覚だけで混沌の世を泳ぐ自由人。
各地を放浪する彼の眼差しは、ひとり遠く、暗黒時代の夜明けを見つめていた。
一方、才蔵はすさまじい武術の才能を秘めた若者。天涯孤独で餓死寸前を生き延びたが、絶望の中にいた。しかし、兵衛に見出され、鍛えられ、才蔵は兵法者としての道を歩み始める。才蔵の武器となるのは、“六尺棒”。地獄の修行を終えた時、超人的な棒術を身につけた才蔵の前に敵は無い―――。
時は来た―――。才蔵だけでなく、抜刀術の達人、槍使い、金棒の怪力男、洋弓の朝鮮娘ら、個性たっぷりのアウトローたちを束ねる兵衛。ついに巨大な権力に向けて、京の市中を舞台に空前絶後の都市暴動を仕掛ける。行く手を阻むのは、洛中警護役を担う骨皮道賢。兵衛と道賢はかつて志を同じくした悪友ながら、道を違えた間柄。かつては道賢、いまは兵衛の想い人である高級遊女の芳王子が二人の突き進む運命を静かに見届ける中、“髑髏の刀”を手に一党を動かす道賢に立ち向かい、兵衛は命を賭けた戦いに挑む。
この世の地獄をぶち壊せ!京を覆う紅蓮の炎の中から明日をつかめ!!